クリエイティブな受験生を支援するハイレベル総合型選抜専門塾《Alternative Academy®︎》の代表・河合雄介が主筆のこのBlogでは、AO入試(現・総合型選抜)の受験生やその保護者、高校の先生、大学の教員、企業の採用担当者の方々からいただいた質問に、私見も含めながらお答えしていきます。
※質問募集は公式LINEでもお受けしております。
※全ての質問に回答できるわけではございません、ご了承ください。
【Q&A】#36-40に続き、今回からは、AO入試(総合型選抜)の受験を考えている生徒さんをお持ちの「中学・高校の教職員」の方々からの質問です。
目次
Q41|生徒の「探究」を入試に結びつけるための指導のコツは?
以前、ダイヤモンド・オンラインの取材でお答えした「愛か怒り」があるか。
このふたつのどちらか(どちらも)からしか、主体的に取り組める研究(探究)のテーマは生まれません。
まずは、このどちらかの興味・関心ある「対象(や現象)」を引き出せるかどうか。
これが最初の関門です。
「好きなものと、嫌いなものを聞き出すくらい簡単ですよ」
そんな発言をちらっと耳にしたことがありますが、LikeとLoveは脳科学的にも異なりますので、この違いをご理解いただいた上で「Like→Love」の対象を引き出すことが必要です。
また、単なる「Hate」の対象を、数ヶ月とはいえ調べ続けることは精神衛生上よろしくありません。
できれば「Love」の対象からはじめ、「探究する」とはどういうことなのかを楽しみながらやることが重要です。
国連やユニセフなどが掲げる「SDGsなどの既視感ある社会課題」を「選択肢」と決めつけ、そこから選んでいるだけのテーマ設定は、そもそも「問題発見」になっていません。
解決しなければならない、重要な社会課題ではありますが、誰かが既に定義/提示しているあらゆる課題は、取り組む先人が多数いますので、「社会的にも学術的にも重要度は下がる」のです。
同じ課題に、従来とは異なるアプローチ(研究方法)で取り組むのであれば、探究学習や大学での研究に取り組む意義はありますが、優勢の比較対象が多く、探究者の自己肯定感を高めにくい可能性もあります。
尚、この「発見ができていない」と、慶應SFCや早稲田、立教大学などの総合型選抜では、面接での合格率が下がりやすくなります。
(上智大は既視感のあるテーマでも、学部によっては通過してしまう場合があります。困ったものです。)
いずれにしても、どちらも始まりは個人の感情的な動機から生まれますので、
リサーチしていく中で客観的な視点は増やしていかなければなりません。
続いて、既存の学問分野で構いませんので、どの領域に関わるか、該当するのかを探すこと。
複数の分野にまたがってもいいでしょう。
いわゆる分野横断型や学際的な学びに該当する場合、たった一つの学問の枠に収まりきらないユニークな探究になる可能性があります。
例えば、日本のお城を探究しようと思ったら、
・城郭の建築方法:建築学
・城下町のつくりかた:都市計画、まちづくり
・歴史的文脈:日本史学
・地形の利の活かし方:地理学
・城主の思想:哲学
など、ざっと挙げただけでも、文系・理系の安易な線引きが無意味なほど複雑な探究のテーマであることがわかります。
探究の対象の設定、学問領域の把握、までできたら、各領域の専門書や専門家から学んでいくことで、新たな発見や語彙の獲得、視点の拡張が期待できます。
中学や高校には、地理や数学、物理、歴史の先生は当然いらっしゃるでしょうから、学校内だけでも「総合的に」支援できる環境があることに気づけるはずです。よりマニアックなリサーチになってくると、高校の各教科の先生でも専門外になってしまうことはありますので、図書室・図書館なども利用し、知識を整理することや、推察していくことは可能です。
高校卒業までの学習環境(小中高)12年間は、「総合的に探究できる基盤は、実は揃っている」のです。
塾や予備校に行けばなんとかなる、と考えている受験生も保護者も教員も、皆さんそれは甘えです。
まずは、現状の環境を活用し考えることを放棄してはいけません。
深めていく中で、どこかで現状では満足のいかないことや、
「部分的」「専門的」な興味・関心の対象や詳細な情報が出てきます。
そうなったとき(なりそうなとき)こそ、我々専門家や、Alternative Academy®︎に声をかけていただけると、視界が晴れるような感覚をアドバイスとして得られることでしょう。
大学の志望学部系統から詳細な学科の候補も自ずと出てくれば、「志望大学」の選定がしやすくなるのです。
「大学名」や「偏差値」から決め始める大学入試はもう過去の文化です。
流行の先端を行く人になるのか、流行の波に流される人になるのか。
各学校・指導者のセンスや価値観に委ねられている現状はまだまだありますが、どうか先を見据えた学校全体での支援がされることを期待しています。
Q42|総合型選抜を「学校全体で支える」には何から始めればいい?
- 現場の教員が「総合型選抜の本質」を理解すること
- 現場の教員が「自信のある自身の専門分野」を存分に生徒の前で語ること
- 学校法人のトップが「偏ったプライド」を捨てること
- 図書館の蔵書拡充や、美術室・理科実験室・音楽室などを安全に配慮して「自由に開放」すること
- 体育系(や音楽系)の部活動参加者に、「科学的に身体のトレーニング」をさせること
- 全科目(家庭科や数学も含め)のテストで「小論文を実施」すること
- 興味関心が重なる生徒が集まり議論できる「少人数制ゼミ(や勉強会)」を開講すること
などでしょうか。たくさんありますね。
まだまだ実施できる高校は少ないかもしれませんが、生徒の思考を変えていくには学校・教員の皆様が変わらなければいけません。
Alternative Academy®︎では、出張講座も多数提供しておりますので、
教員研修も兼ねて初年度だけでも導入していただくことをお勧めしています。
Q43|増加する総合型選抜入試の志望者に、学校の成績・評価をどのように活かしてあげるとよい?
「学校の成績・評価をどのように活かしてあげる」かは、どちらかというと学校推薦型選抜の話ですが、総合型選抜でも「評定平均」以上に「出席日数」は、面接官の大学教員が気になるポイントでもあります。
以前からもありましたが、ここ数年の面接での質問に「欠席日数と理由の確認」が増えています。
「ちゃんと大学通えるのか?」、「勉強について来れるのか?」といった、入学前の段階で「ネガティブな要素がチラついてしまう」からです。
独自の校則による厳しすぎる基準での遅刻認定や、探究学習(や芸能活動、学会発表など)を課外活動と認めず公欠扱いにしないなど、一概に廃止を訴えることが難しい例は多々あります。
時間の問題ですが、出席に関する基準は、校則の改訂などで今後変わっていく学校もあるでしょう。
これは、学校側がどのように生徒を信用するか次第ではあります。
現時点では、「校風や校則」を理解した上で入学できるような中学生向けの広報活動くらいしかできることはありません。
また、テストの点数や成績の採点方法は、各高校や担当教員によって様々です。
高校入学時の偏差値が高いからといって、大学側の印象が大きく変化したり、採点が優遇されるわけでもありません(多少の調整はありますが)。
とある中高大一貫校の場合、評定平均が他校と比べても0.5〜1.0近く上乗せされているような生徒を多数見かけます。彼らを指導してきた経験上、「実力に伴わない定量的評価」が「過剰な自信」につながっていることがあります。書類審査は通過しても、面接や二次試験で違和感のある受験生になってしまう可能性があります。このような違和感を生まないためにも、高校の内申点を甘くする意味はありません。
支援できるとしたら、評定平均が志望校の出願条件になっている生徒が成績不振の場合です。
点数がギリギリになりそうな生徒にはあらかじめ危機的状況を伝えてあげることで、試験勉強に早期に取り組ませるなどアドバイスすることはできます。
特別扱いすることは周囲の生徒から不公平であることが指摘されるでしょうから、すべきではありません。学校の成績・評価は客観的な事実でしかないのです。
その上で「活かす」のであれば、志願者評価や推薦書の書き方の工夫です。
Alternative Academy®︎の受講生(特に慶應SFC特化クラス)には、「志願者評価書を書くときの視点」を、評価者の方々に共有できるよう映像講座でご案内しております。
高校と大学の教員では、評価軸に共通点もありますが、異なることがよくあります。
そのズレを理解することで、活かし方の視点は得られるはずです。
一つだけお伝えすると、「飾らせない」ことです。
本質的に「素材を活かす」ことでもあります。
そのまま、シンプルに普段の生徒の様子を書けばいいのです。
良いところも、課題や及第点も含めてです。
しかし、難しいんですよね…「飾らない」見せ方って。
過剰なメイクやアクセサリーではなく、「ナチュラルメイク」のイメージに近いです。
慶應SFCでも「重要なのは素朴さ(Purity)」が前提ですので、日々、生徒と対等に向き合ったり、同じ方向を見ること、いろんな角度で生徒を見ることが大事なのです。
Q44|学校側で行う「志望理由書」の指導で一番多いミスや改善すべき課題は?
「未来偏重型の志望理由書」になってしまうことを、指摘も添削も改善もできない学校(や一部の学習塾)は結構多いのです。簡単に言うと、「志望理由書の半分以上が、時制が未来形」の場合、指導者にも課題があると考えています。
「志望する理由」には、大きく分けると二つあります。
①過去からの継続・積み上げによる到達
②未来・将来像からの逆算
この②の要素は必要な項目ではありますが、①がほとんどない状態では「根拠のない空想」と誤解されても仕方がない状態だからです。
まずは、時制のバランスを客観的に指摘してあげることが先決です。
他にも、小論文の先生が志望理由書を添削する際に多いのが、「接続詞の多用」です。
Alternative Academy® ︎︎︎では「接続詞は、できるだけ使わない」ことを推奨しております。
理由は単純で、「接続詞=接着剤」だからです。
論理構成=構造の主要単位である「一段落や一文」同士を「接続詞」で強引に繋げている状態になりやすいからです。
時間制限のある二次試験の小論文では、接続詞を効果的に使う「型」を身につけておくことは、入試テクニックの一つとしては有用です。しかし、志望理由書においては、「論理の飛躍」になってしまう受験生が多くいらっしゃるのです。
この辺りを気をつけるだけでも、学校内での添削のクオリティは向上させることができるはずです。
Q45|面接練習を効果的に行うための“問いの立て方”を教えてください。
最も面接対策になることは、「面接の”練習”は行わないこと」です!
…と、長年お伝えしております。
実際、私の受講生のほとんどは「模擬面接1〜2回程度」で、あとは「良質な雑談」をオンラインもしくはカフェで行います。会議室で行うこともありますが、あえて日常的な環境でやることで、本音と本質的な思考(語彙)を、傾聴し引き出します。散歩しながら5-10分雑談することも有効です。
これができると、どんな志望理由や志望学部の想定でも「問いを立てやすく」なります。シンプルなことなのですが、多くの塾ではあまり取り組まれていません。
「高額な授業料に見せかけるためのテクニックやマニュアル配布」が横行しているだけで、本質的な対談相手になっていないことが多いのです。
賢い受験生にとって優先したいことは、「志望校・学部の教員=専門家」から高い評価を得やすい本質的な思考力を身につけることです。「解」ではなく、「途中式」を引き出すような「問題文」の作成と似ています。定期テストの問題を考案することとも実は似ているのですが、口頭言語で行う場合は少々難しいことも理解できます。
ご質問にある「問いの立て方」は、つまり医師が行う「問診」でもあり、対談者(インタビュアー)としての「聞き方と聴き方」に分けて考えられます。どちらも、中学・高校教員の皆様のお困りごとの例としてよく耳に入ってきますが、「問い方」のコツは、「先入観や偏見を持たない」ことです。
初対面のつもりで、できれば小学生になったつもり(人生一週目の設定)で、相手やその発言に興味を持ち、気になることを聞けるかが前提です。
「知った気にならない」だけでも「問い」は立てやすくなります。
わからないから、聞く。シンプルな話です。
次に「聞き方・聴き方」ですが、右から左へ聞き流していいので、「気になる抽象的なキーワードだけ」を抽出し、その定義や用法、対義語検証も含めた議論を深めてみるだけでも「問い」を立てやすくなります。
例えば、「戦争ではなく、平和な世界をつくりたい」と、よくある抽象的社会課題解決系志望理由の受験生の場合、「なぜ、戦争がないと、平和になるの?」と聞いてみるのです。
そうすると、「平和の定義は人・国・文化・価値観次第だな」とか、「戦争と平和はセットでよく使われるけど、実は対義語ではないんだな」とか、頻出単語で満足していた浅はかな思考を「問い直す」質問が出やすくなります。
◆戦争はさまざまなものを破壊しますので、「マイナス」な動詞が付随します。
→破壊とか、殺傷とか、制圧とかですね。
◆平和は、字の如く「±ゼロ」の状態です。
→現状維持の揶揄としても使われますね。
こう考えると、「マイナス(戦争)の対義語(反対)は±ゼロ(平和)」と、多くの日本人が当たり前のような顔をしておかしな主張しているわけです。
まさしく「その浅い思考自体が平和ボケだよね?」と問い詰めることもできます。
数学的には、マイナスの反対はプラスですから、
例えば「創造」が戦争の対義語と気づくことができます。
こういった発見が、面接中の議論から生まれるようになると、慶應SFCや早稲田、筑波、立命館などハイレベルな総合型選抜の二次試験に合格する可能性が高くなります。
正直にお話しすると、大学の面接でも「定番の質問ばかりの学校」と「意外な質問のある学校」では、合格者の質がかなり異なります。一概に「AO入試の面接対策や過去問」といっても、「どの大学・学部」に「どんな志望理由で挑んだか」次第で、想定できる質問は大きく変わります。
目の前の受験生の関心や主張に耳を傾け、首を傾げ、斜め上からの指摘や質問をしてみる。
学校教員の皆様も、生徒の志望学部についてきちんと理解した上で、議論を生むような問いかけをしてみてください。
次回は、高校教員の方々からの質問、Q46-50にお答えします!
Alternative Academy®︎
代表・河合雄介
この記事を読んでくださった受験生・保護者・関係者の皆様にとって、
受験本番までの時間が最も長く残っている日は、今日です。
「総合型選抜、何から手をつけていいかわからない…」
「書類の添削ってどこの塾も同じですか?」
「学校の先生との面接練習だけで合格できますか?」
様々なお悩みや心配事があるはずです。
まずは一度、Alternative Academy®︎の無料カウンセリングを受けていただき、最適な準備をご検討いただければと思います。皆様の決断を先導&後押しできる準備を整え、サポートでお待ちしています!
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