このBlogは、全国各地のクリエイティブな受験生の「探究と研究」を支援するハイレベル総合型選抜専門塾《Alternative Academy®︎》の代表・河合雄介が主筆です。AO入試(現・総合型選抜)の受験生やその保護者、高校の先生、大学の教員、企業の人事・採用担当者の方々からいただいた質問に、私見も含めながらお答えしていきます。
※質問募集は公式LINEでもお受けしております。
※全ての質問に回答できるわけではございません、ご了承ください。
【Q&A】#81-85に続き、企業の人事部・人材採用・社員研修担当者の方々からいただいた質問に回答します。
目次
Q86. 自己主張や自己効力感が強い学生は、協調性に欠けるリスクが高いのでは?
まず結論を率直に言うと、自己主張の強さと協調性の有無は、因果関係で語れるものではありません。
総合型選抜や探究活動を通じて育つ力は、自己表現だけではなく「前提の再解釈」と「目的・目標までのプロセス設計」です。
また、単なる自己肯定感ではなく、自分の役割と価値を認識できている自己効力感は、活かし方次第では組織マネジメントにも好影響を及ぼします。
経団連の新卒採用調査でも、企業が重視する上位項目は「主体性」「課題解決力」「チームワーク」(※1)ですが、ここで注目すべきは「チームワーク=単なる協調性や忖度する人」ではなく、「チームとしての目的遂行のために、時には破壊的イノベーションも起こせる貢献意識の高さ」だと考えています。
(とはいえ、前者を求める企業も一定数いることは承知しています)
(※1)一般社団法人 日本経済団体連合会
「新卒採用に関するアンケート調査結果」シリーズ
https://www.keidanren.or.jp/policy/index.html(政策提言・調査 >> 雇用・労働分野内に掲載)
自己主張が強いというのは、自分の考えを明らかにする、表明するという意味でもあり、協調性とは対極に位置することではありません。
むしろ多様な視点を持つメンバーがいて、それを受け止め合う文化がある組織は、丸く収まるだけでは生まれない価値を創出します。GoogleのProject Aristotleでも、チームの成果を決める最大要因は“心理的安全性”であるとされています(※2)。
つまり、異なる意見が出ても「それを共有できる関係性」こそが、協調性の真の核心ではないでしょうか。
(※2)Google
Project Aristotle(心理的安全性研究)
https://rework.withgoogle.com/print/guides/5721312655835136
(Google re:Work公式ガイド)
「総合型選抜経験者」は、自分の問いを持ちながらも、他者の問いを聞く訓練も積むことが重要です。
面接や志望理由書の対話の中で私の様な講師やコーチからの異なる視点を受け止め、再構築していく経験はもちろんですが、グループディスカッションやインタビューなどで対話を通して「質問力」も高めやすくなります。
自己主張が強いのではなく、合意形成のための対話設計ができるかどうかが重要であり、主張できないよりは仕事ができる可能性があります。
したがって、協調性の評価は「静かに従う力」ではなく、「目的と役割を言語化してチームに貢献する力」として見るべきです。
*優秀の定義についてはQ81も参照
Q87. 「探究型人材」は、既存の社風や制度を壊してしまわないか心配なんです
この問いは、「変化のない組織観」にお気づきになられていないのではないか、という前提で回答します。現代の様々な事業環境は、益々不確実性を増しており、安定だけを求めている保守的な組織はリスクの方が高いです。
総合型選抜の経験者、あるいは探究的な学び・研究を実践する学生は、常に前提条件を問い直し、仮説と検証を繰り返しやすい特徴があります。これは決して既存ルールを無条件に破壊する態度ではなく、ルールの目的と前提を検証する態度です。
意思決定の土台が陳腐化しているとき、その前提を疑わなければ土台が腐って崩れるのも時間の問題です。
その土台への違和感に気づき、構造補強(更新)できる人材は“ルールを壊す”ように見えますが、実のところは組織が見落としてきた前提の欠陥に気づいてくれる貴重な存在です。
デロイトのGlobal Human Capital Trendsでも、「適応力のある組織ほど、ルールの目的とプロセスそのものを再設計できる」とされています(※3)。
そして、それは「壊す」のではなく、「意味のある更新」を志向しているのです。
組織が変化に対応したいのであれば、総合型選抜や探究/研究を経験した人材は敵ではなく、事業基盤をアップデートする目を持つ鑑定士のような存在です。
ルールを盲目的に守ることと、意味を問いながら守ることはまったく異なります。
探究型の人材は後者を体現できる可能性が高いのです。
「探究型人材の“問いの設計力”についてはQ83でも詳述」
(※3)Deloitte: Global Human Capital Trends
https://www2.deloitte.com/global/en/pages/human-capital/topics/global-human-capital-trends.html
Q88. 総合型選抜受験の出身者はマネジメントしづらいのでは?
「扱いづらい」と感じるのは、探究型人材の問題ではなく、組織の評価・指示・報告のフレームが旧来型で設計されているからではないでしょうか。
総合型選抜(旧・AO入試)で合格した人材は、自ら問いを更新し、プロジェクトの設計を前倒しで描ける人も少なくありません。「誰かの指示を待つ受動的な人材」では、総合型選抜に合格するのは難しいからです。
これは“主体性”の強さの表れとしても解釈できますが、旧来型の組織マネジメントの仕組みでは、「邪魔者扱い」されるなど摩擦になりやすい現状はあると推察できます。
Q87(*3)のデロイトの調査でも、組織が直面する最大の課題は「マネジメント手法の陳腐化」であるとされています。つまり、探究型人材がマネジメントしづらい性質なのではなく、旧来のマネジメントが探究型人材をマネジメントできないか、その人材を想定していないのだと思います。
探究型人材を活かすマネジメントのポイントとしては、
・目的と目標の使い分けと可視化・言語化
・都度、合意を形成するが、報告・連絡・相談は簡易的にできるようにする
・仮説検証サイクルの共通言語理解と実践しながら即改善する
・途中式(思考のログ)を可視化し、再現性を共有する
を評価・提示できるようにする仕組みの構築、見直しです。
指示された成果物ではなく、プロセスの設計と更新方法も評価できる組織は、探究型人材と相性もよく、相互に成長できる関係になりやすいのではないでしょうか。
Q89. 探究型人材が上司より視座が高い場合、組織構成が崩れたりしませんか?
視座の高さそのものが「組織崩壊を招く」とは断定できません。
むしろ、視座が高い人材は組織の潜在的な思考停止を「指摘できる」可能性があります。
ここで重要なのは、組織の意思決定・合意形成ルールに柔軟性があるかどうかです。
視座の高い若手が「もっと精緻に仮説を検証すべきだ」と言ったとき、上司が「過去の前提で評価する」を前提にしているなら、当然摩擦が生まれます。
問題は視座の差ではなく、意思決定に影響する発言や提案の優先順位です。
マッキンゼーの組織研究でも、成果を生むチームは「異なる視座を結びつけられる合意形成プロセスを持っている」と示されています(※4)。
(※4)McKinsey & Company
Diversity & Organizational Performance 関連レポート
https://www.mckinsey.com/featured-insights/diversity-and-inclusion
視座が高い人材は、既存の前提に疑問を投げかけられる役割も果たします。
この人材の要件に、新卒も中途採用も役員も関係ありません。
この投げかけられた問いを排除するのか、受け入れることを「崩壊」と捉えるか、「再構築」と捉えるかは組織の器量次第でしょう。探究型人材の視座は、既存社員との優劣の差ではなく、組織成長の素直なヒントなのです。
上司との視座の差がある場合、それは「価値にギャップがある」のではなく、「価値を更新する合図」として受け止められるといいですね。
*学歴と能力の相関についてはQ84もご覧ください
Q90. 学歴ブランドは営業や採用広報で有効では?
短期的には有効です。
売り手市場で「有名大学卒」と書くと安心感(と主張する側の自己肯定感)も生まれるからです。
やたらと東大卒・や元東大(つまり中退・高卒)をSNSのプロフィールに「強調して」書く人が多いのも頷けます。本当に東大卒で賢い方なら、わざわざ「東大卒」なんて書かなくても仕事は高い質でこなせるはずです。「東大卒」のわずか三文字によって、顧客側の意思決定を加速させる効果もあるのでしょう。
ただし、安心感はただのマーケティングや営業活動上の効率化であり、価値創造には全くなりません。
実際、日本マーケティング協会のデータでも、顧客が最終的に評価するのはブランドイメージではなく「成果の再現性」です。研究の価値をはかる上でも再現性の高さは重要です。
これは採用においても同じです。
企業が最終的に評価するのは、社内で価値を生み、継続的に成果を創出し、変化に適応できる能力です。
学歴ブランドは、確かに短期的な“認知”は高めますし、「歴代の先輩」次第では「優秀な傾向」を感じられる組織もあることと思います。
しかし、中長期的な“組織力の強化”や“戦略の最適化”を高めるなら、大学名ではなく研究内容や学部で学んだ専門的知識の活用方法を考えられる創造力の方が重要です。
エリート的な肩書に寄りすぎる古い日本企業の採用基準では、安心感を得られるかもしれませんが、同質性の高い集団を生みやすくなります。均質な集団は短期での最適化には強いものの、環境変化や想定外への対応力では弱さも露呈します。
総合型選抜出身者は、ある意味でエリートに対抗するストリートな思考を持っている場合も少なくありません。
学歴ブランド「だけ」に依存しない「問いの設計力」を持っていなければ、エリートが集まりやすい大学には合格しないでしょう。だから、企業の人事部が入社試験の面接で問うべきは、「目の前の学生がどのような問いを立て、どのように実行・修正してきたか」です。
日本の経済界における学歴とは「大学入学前の偏差値」である事実に気づかねばなりません。
本当に賢い人材の価値は、未来の課題に対して適応できる姿勢や視点、期待値で決まります。
*学歴フィルターに関する議論はQ82でも回答しています
企業における新時代の人材採用活動のお悩みや、人材研修、代表社員(=ブランドの一部)の見せ方、本質的な組織力向上を考えたいご担当者の方へ
「自社なりの優秀の定義を、まだ言語化しきれていないかもしれない」
もしそう感じられたなら、それは危機ではなく、再設計のタイミングです。
一般的なミッション・ビジョン・バリューやパーパスだけでなく、ブランディングの観点では様々な「アイデンティティ」の形成と社内外への浸透・認知が不可欠です。
特に近年は、「Verbal Identity」も重要な指標であると考えることができます。
Visualだけでなく、キーパーソンの「言葉」がどう企業イメージとして露出できるか。
テキストであれば「Document Identity」、ポッドキャストやインタビュー番組であれば「Sonic Identity」の観点でも、ブランドイメージの設計が重要なのです。が、まだまだ認知できている企業も少なく、無意識・感覚的に済ませてしまう、広報部や代理店も多いのです。
そのような「言葉」を介した戦略の採用や育成は、“選抜”の過程に問題がある前に、組織の前提である「私たちの会社は、どんな会社なのか、どうあるべきか」を言語化し、非言語化もセットで行っておく必要があるのです。
人材の「どの能力を評価し、どの問いを重視」するのか。
どんな人材同士を混ぜることで、新たな組織を形成するのか。
ここに必ず、企業独自の思想や哲学が現れます。
単発の講演やロジカルシンキング研修、ブランドフィロソフィー構築のコンサルティングなどにとどまらず、
・増加する「総合型選抜人材」の見極め方、活かし方
・AI前提時代の人事評価の別視点発見
・若手が伸びる、活躍できる組織マネジメント
など、貴社の事業フェーズに合わせた相談・設計からご一緒します。
採用は「選ぶこと」ではなく、「未来の組織を想像して編集すること」です。
もし、貴社の人材戦略をアップデートしたいとお考えであれば、
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次回は、Q91-95にお答えします!
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